生まれて初めて、お歳暮をいただいた。
『お歳暮 小川晴太』
定形封筒より小さいけれどしっかりした紙の封筒に、ちゃんと赤熨しも付いたそれは、無造作にDMや広告と一緒にポストに入っていた。
中身は映画のチケットで、前売り券とは違い作品は指定されていない。
だけど、期限は今年度いっぱい。
それが、たったの一枚だけ。

『一緒に行きませんか?』

添えられたメモにはそれだけ書いてあって、日付も映画も、何も指定されていない。
チケットをぴらぴら言わせながら、うーーーーーん? と唸った。
クリスマスイブまではあと三週間。
それなのに、なんで24日を指定してこないの?

「なんか、試されてる?」

他意はないのか、それとも私の出方を伺っているのか。
里葎子さんではないけれど、胸ぐらを締め上げて、あのねー、お歳暮ってのいうのは洗剤のセットとか、カタログギフトとか、お札を敷き詰めた高級フルーツなんかが一般的で、こんな中途半端なものを送りつけてくるやつなんていないんだよ? それともあなたのご両親は猟師か何かで、餌を置いてじっと罠にかかるのを待つように幼いみぎりより骨身に叩き込まれてきたのか? どうなんだよ! 小川晴太! と問い詰めたい気持ちだった。

想いを匂わせる態度や言葉、私を見つめる目。
あれは友達とか、ましてお客さんに向けるものではない……と思いたい。
それは私の方も同じで、この気持ちに気づいてないなんて言わせない。
だけど、だからこそ難しい。
改めて恋人になるきっかけもタイミングもわからない。
そこにきて扱いに悩む『お歳暮』だった。
クリスマスプレゼントじゃなくて。

里葎子さんほどの自信も勇気もないけれど、どこかで踏み込まないといけないのも事実。
もしずーっとこのままなら、本当にただの友達になってしまう危険もあるのだ。
小川さんと友達になりたいなんて、ほんの少しも思っていない。