その後小川さんが細貝珈琲館のカフェに行きたいというので、それも二つ返事で了承した。
閉店も近いせいか人もまばらな店内で、声のトーンを落としながらもずっと話し続けた。

「小川さんはやっぱり青なんですね」

今日小川さんに提供されたカップは焼き物で、土の色と鮮やかな青がうつくしく溶け合っているものだった。

「男はこんなものじゃないですか? 少なくとも赤のハート柄にはしないと思う」

私のカフェオレは、白地に赤とゴールドのラインが入ったカップに入ってきた。
側面には、装飾的なハートが描かれていてかわいらしい。

「やっぱり服ですよ」

赤に黄色いラインの入ったカットソーを指差して言うと、小川さんは笑った。
そして口を尖らせながらカフェオレを飲む私に尋ねる。

「なんでカフェオレの名前が『半月』なんですか?」

「『新月』っていうブレンドが深入りで苦味が強いからカフェオレに向いてるんです。で、」

「ああ! ミルクで半分割るから『半月』!」

「ちなみにアイスコーヒーは『凍て月』。無理矢理感は指摘しないでください……」

「なるほど」

また笑って、メニューにあるコーヒーの解説を興味深げに読む。

「軽めのブレンドってあったから『そよ風』にしたけど、パプアニューギニア産なんだ。……よくわからないな。どこだっけ?」

「えーと……あれ? オーストラリアの方だったような……」