もじもじと食べかけのおにぎりを握りつぶす私と対照的に、里葎子さんは小気味良く鶏の照り焼き、ご飯、卵焼き、ご飯と食べ進めて行く。

「まあ、端から見てれば単純でも、当人同士って見えないものよね。だけど、紅葉見に行くなんて十分に気を持たせる行為だと思うなー。それをわからないほどバカなのか、わざとやってるなら、そんな男はやめなさい」

「そんな人じゃないと思うけど……」

控えめに考えても、好意的に見られてるとは思う。
だからって小川さんが私と同じ想いでいるという自信はない。

「そういえば美夏ちゃん、ここしばらく様子がおかしかったもんね。変な男に引っ掛かってなきゃいいなーって旦那とも心配してたの」

「いや、だから大丈夫ですよ。そんなんじゃないですって」

「端から見れば明らかにダメ男でも、恋してると見えないものなのよね」

里葎子さんを取り巻く空気がどんどん剣呑なものになっていくので、無理矢理にでも話を戻した。

「それで、お弁当のことなんですけど……」

「ああ、それね。普通のおかずがいいと思うよ。卵焼きとか、からあげとか。あんまり凝って失敗するよりいいじゃない」

「そうですね」

「さりげなく人数は確認した方がいいかも。ふたり分だけ作って、たくさん人がいたら困るじゃない? それに食事の場所予約してたら気まずくなるし。あと、アレルギーもね。サプライズは失敗すると痛いからオススメしない」

「わかりました」

「そもそも、その男、本当に大丈夫?」