小さな子が携帯をいじってしまうことはよくあるらしく、私にも何度か友人から無言電話のようなものがかかってきたことがある。
「ごめん!子どもがかけただけ!」と謝罪の連絡があったりもした。
どうやら私のアホなメッセージが、無関係な他人に流出したらしい。

「いや、別に私はいいですよ。どうせくだらない内容だし。相手は誰なんですか?」

個人情報というほどのものでもないから構わないけれど、興味はある。
くだらないと自覚していても、もしバカにされたらちょっと悲しい。

「中学校のときの同級生。去年の同窓会のときみんなで連絡先交換したの。それっきり連絡なんてしたことないのに」

「あははははは!そんな人にいきなり『ツチノコ』!」

「もう、恥ずかしい!!」

自分だったら嫌だけど、他人事だと笑い話。
いきなりあんなメッセージを受け取ったら、人間って一体どんな反応するものだろう?

「それでね、『ツチノコ見たい!』って言ってるんだけど、例のアジの写真も転送していい?」

「どうぞ、どうぞ」

私自身の写真でもないし、お皿とテーブルくらいしか写ってないから見られたって平気だった。

「もうヤダ。さすがに警察や救急にかけられたことはないけど、今回は最悪」

ササッと操作を終えて、チーズを詰めたちくわを悩ましげに咀嚼している。

「……というわけで、メッセージの大元が後輩だってことも、娘の誤操作だってことも、全部伝えさせてもらった。本当にごめんなさい」

「私は平気ですから、もう気にしないでください」

再び携帯のバイブ音がして、里葎子さんがメッセージを読み上げる。

「『俺も今夜はツチノコにします。楽しいメッセージをありがとう』」

「『喜んでもらえて光栄です』とお伝えください」

その反応がうれしくて笑顔になっていた。
エイプリルフールはやっぱり春の行事だな、とあたたかくなった胸の中で思う。