ドーン! と花火が上がり、今度はたてつづけにドーン! ドーン! といくつも花開く。
プラタナスと人で見えない地上近くでは、吹き上げるような花火も上がっているらしい。

「そろそろ終わりですね」

彼が言ったのは、花火のことだった。
だけど私にとっては『この時間が終わり』という意味と同じ。

「花火大会が終わると、もう夏も終わりって気分になりますね。まだ暑いけど」

ほつれた髪の毛を揺らす風に、季節の終わりを感じて私は答えた。
夏なんて好きではない。
ジリジリ肌を焼く太陽なんて、早く沈んでくれ、と思って毎日を過ごしている。
それなのに、急に夏が愛しくなった。
「行かないで」って声に出してしまいたいくらいに。

「ミナツさんは誰かと一緒ですよね?」

「職場の先輩と、その家族とかお知り合いとか」

「じゃあ、早く戻らないと」

「…………はい」

そう言うのに、お互い動く気配も見せず、夜空に花火の名残を探して、いつまでも眺めていた。