「はーーーい」

通話ボタンをタップする時点で母だとわかったから、面倒臭さを隠さず出た。

『あんた、ゴールデンウィークは帰って来るんじゃなかったの?』

もしもしという言葉さえなく、小言はいつも突然始まる。

「私、明日と明後日は普通に仕事だもん。3日に帰るよ。遥と会う約束してるし」

『え? 遥ちゃんと会うのっていつ?』

「えー、まだ決めてない」

時間を無駄遣いするのは好きだけど、母の小言に取られる時間はもったいない。
有効活用として、食パンをトースターに放り込み、スティックタイプのミルクティーをカップに入れて、食事の時間にしてしまう。

『伯父さんの一周忌法要出なかったんだから、あんたも樹もご挨拶は行かないといけないのよ? 早く日にち決めて連絡しないと』

「……お兄ちゃんも帰って来るの?」

面倒臭いなという不満を、朝ごはんとも昼ごはんともつかないパンで押し込むと、いつもよりなんだか乳臭い味がした。
あ、コンビニでちょっとお高いマーガリン買ったんだっけ。
いつものスーパーの、安っぽいプライベートブランドの味が恋しい。

『友達と飲み会があるんだって』

「彼女と世界3000周旅行でも行ってればいいのに」

『彼女なんてできるわけないでしょ。あのデリカシーのなさで』

「だよねー」

『孫なんてもうとっくに諦めてるよ』

「私をお兄ちゃんと一緒にしないで」