杉田の言葉を信じるなら杉田が見た女が失踪に関係あるか、もしくはもう通り魔的犯行や顔見知りではないストーカーの可能性も出てきた。

『植野さんのこと探してるんですよね』
『ああ』
『僕もまた植野さんに会いたいです』

杉田は視線をさ迷わせながら喋っている。

『植野さんのこと見つけてあげてください。彼女に日の当たらない場所は似合わないですから』

どうやら杉田は菜摘が生きていると信じているようだった。
その姿を見ていたら杉田はシロに思えてならなかった。
杉田は失踪とは無関係だと俺の直感が告げている。

二人の顔を見ると二人もなんとも言えない表情を浮かべていた。
杉田に謝罪し俺たちは家を出た。
トボトボと宛もなく歩き出す。

『残り2日……ここにきて手詰まりか』
『そうですね……』
『他に手がかりはないのか…!』

無言になる二人。

『杉田の言ってた女、探してみますか』
『……そうだな』

いくらなんでも手がかりがなさすぎる。
一体どうやって見つけるって言うんだ。

『おい、木村、諦めるなよ』
『菜摘を助けられるのはボクたちだけなんですよ』
『俺だって無謀だと思ってるよ、でもな、やるしかないんだよ!俺らがやらなきゃ菜摘はまたいなくなっちまうだぞ。目の前で救えるかもしれない命見殺しにすんのか?』
『ボクはやらない後悔よりやって後悔したいです。精一杯手を尽くしてそれでもダメって悔しいけどやらない後悔より100万倍マシですよ』
『お前が助けたいって言ったから俺らは動いたんだぞ!俺らを巻き込んだお前が一番最初に降りるなよ』
『そうですよ。菜摘だって木村さんに助けてもらいたいに決まってますよ!』
『二人ともごめん…俺弱気になってた』
『不安な気持ちは分かります』
『あのなぁ、不安は妄想なんだよ。不安って、もしこうなったらどうしよう、自分の思い通りには絶対ならないんだって最悪のケースを想像するよな?』
『ああ』
『想像しただろ?』
『ん?』
『だから妄想なんだよ。実際に起きてもない事を勝手に想像して勝手にパニクったり勝手に落ち込んだりしてる』
『……』
『常に今を見ろ!先のことはその時に考えろ!』
『つまりはアクシデントが起きる前に悩むんじゃなく、アクシデントが起きたあとに悩めってことですね』
『まあ、それじゃあアクシデントが起きる前提みたいでなんか違う気もするけどな』
『言いたいことは館林さんと一緒ですよ!』
『菜摘を救えないんじゃないかって不安になってるんだよな?それは菜摘を救えなかったときに存分に後悔すればいいんだよ。今は立ち止まって落ち込んでる場合じゃない』
『ボクたちがやることはずっと変わってませんよ!姫がなぜ失踪することになったか突き止め、姫を助けること』
『……分かってるよ…!なんだよ姫って』
『拐われるのはだいたい姫じゃないですか』
『よし!じゃあ姫を助けに行きますか』
『なんだよ館林まで』

二人に渇を入れられ色んなモヤモヤが吹き飛んで今ではスッキリしていた。
頭をシンプルに。
必ず菜摘を助ける。
一人心の中で誓いをたてた。