3日後の8月17日金曜日――――菜摘失踪まであと4日――――

全く進展がなく焦りに焦っていた俺の携帯がブーブーと震え着信を知らせていた。
相手は館林だった。
急いで通話ボタンを押す。

『もしもし、館林!』
『おー!木村!首尾はどうだ?』
『ダメだ』
『森からもなんもないのか?』
『これといってないらしい』
『そうか』
『そっちはどうなんだよ』
『あー、あんまりよくないな』
『そうか……』
『一週間前までにケリつけようって言ってたのに悪いな』
『いや、俺もだから』
『ちなみになんだが菜摘のクラスメイトから面白い証言があったぞ』
『なんだ!?』
『隣のクラスの松本っていう女性徒が21日の2・3日前に廊下で女性徒とぶつかったらしい』
『それがどうした?』
『それがだな、ぶつかった時にショー用のデザイン画と衣装を持っていたんだ』
『それって菜摘のか!?』
『おそらくな』
『でもなんで菜摘のだって分かったんだ?』
『それが彼女、21日に菜摘がデザインと衣装を1からやり直してるのを目撃してるんだよ』
『そういうことか』
『それで「あの時盗まれたからやり直してるのかな」って思ってたら菜摘が失踪してしまって忘れられなかったんだそうだ』
『なるほどな、盗んだ女は誰だったんだろうな』
『柿崎里沙』
『は!?』
『ぶつかったのは柿崎里沙だったって松本ちゃんは言ってたよ』
『いや、待てよ!菜摘とは一番仲良いはずだろ!?』
『確かに、松本ちゃんは菜摘とは親しい間柄じゃなかったから嘘をついている可能性もあるし、記憶違いかもしれない。だけど柿崎里沙が菜摘のことを良く思っていなかった可能性だってゼロじゃない』
『そんな』
『もしかしたら柿崎が菜摘の失踪に関わってるかもしれない、本人に聞いてみるしかないな』
『そうだな』
『こうなると思って明日柿崎里沙を呼び出してある』
『仕事が早いな』
『当然だろ』

電話越しでは見えないが館林がニヤリと笑っている顔が目に浮かんだ。
明日の待ち合わせを取り付け諸々打ち合わせ電話を切る。

ふぅー。
少しだけ前に進んだ気がする。

確かに柿崎が菜摘の失踪に関与していたとしたら、容易に菜摘を連れ出すことが出来ただろう。
しかし動機が分からない。
そしてどこに連れ去り、菜摘をどうしたのか。
それは明日、直接本人から聞き出すしかないな。