目的を果たし図書館を出ると森に遭遇した。

『なんなんですか、わざわざ休日に呼び出して』
『悪いな』
『おー!お前ら!』

遅れて館林がやってきた。

『どうしたんだよ、急に』
『菜摘のことで分かったことってなんですか?』

俺は二人を呼び出していた。
こんなに早く来てくれるとは思っていなかった。
恐らく連絡を受けてすっ飛んできてくれたんだろう。

夕焼け公園を3人で歩きながら俺の仮説を話し出す。

『菜摘は今日が2012年8月7日だって言ってたんだ』
『どこかおかしいですか?』
『いつだったか菜摘が雨に降られたって言ってた時があって』
『それがどうした?』
『でも俺はその日晴れてたと思うんだよ』
『どういうことです?』
『俺はてっきり菜摘は俺と同じ時間を過ごしてると思ってたんだ』
『同じ時間?』
『つまり、菜摘は生きてるんじゃないか?』
『は?』
『今日の2012年8月7日はまだ生きてるんだ』
『それって…!』
『ああ、菜摘と一緒に出掛けた時同じ店に入ったはずなのに俺はオムライスで菜摘は鯖味噌定食だったことがあった』
『一緒に出掛けたってなにしてんすか』
『おい、今はそれはいいだろ』
『図書館で調べたんだけど、その店今はオシャレなカフェになってるけど5年前まで夕焼け食堂っていう定食屋さんだったんだ』
『5年前…』
『なるほどな』
『うまく言えないんだけど菜摘は平行世界なんかじゃなくて、今、俺と繋がってる過去に生きてるんだと思う』
『そんなことあり得るんですか?』
『まあ信じがたいが辻褄は合ってると思うぜ』
『もしかしたら死んでしまっていて霊となって同じ時間を繰り返しているだけなのかもしれないけど』
『いや、待ってください』
『どうした?』
『先週菜摘に杉田の話しました?』
『え?』
『杉田?』
『どうなんですか?』
『そういえばしたかも』
『木村さん、館林さん、菜摘のこと救えるかもしれませんよ』
『え、ほんとか!?』
『おいおい、まさか』
『はい。木村さんの言動が過去の菜摘の行動に影響を与えたかもしれないんです』
『どういうことだ?』
『杉田は菜摘に変なこと言われたって言ってただろ』
『ああ』
『菜摘にはどうやって杉田の話したんです?』
『唐突に隣のクラスの杉田って知ってるかって』
『おい、ひどいな』
『さりげなさが微塵もないですね』
『仕方ないだろ』
『その日他には何話しました?』
『んー、何か身の周りで不審なことはないか聞いてストーカーされてることがわかって柿崎さんに相談しないのか聞いて』

ハッとした。
自分の言葉と杉田の言葉がリンクする。

『何か分かったみたいだな』
『ああ』
『なんです?』
『菜摘になんで杉田や柿崎のこと知ってるのか聞かれて俺は咄嗟に幽霊だって菜摘の守護霊だって言ったんだ』
『繋がりましたね』
『失踪の3週間前、菜摘に話しかけられ幽霊のことを聞かれた。まだ断定は出来ないがお前の言葉で菜摘が動いた可能性が高いな』
『そうなのかな』
『もし木村さんが杉田の話をしなかったら二人は会話をすることも無かったかもしれませんよ』
『きっと一度目の2012年ではこの会話は無かっただろうよ』