暴れまわって人目が気になったので場所を移すことにした。
渋い喫茶店に入り4人掛けのテーブルに通された。
逃がすまいと杉田を奥に座らせその隣に館林が座った。

『怖がらせてすみません、ボクたちは植野さんの行方を探していまして同級生の皆さんにお話を伺っているんです』
『は、はぁ』

最初から森が声を掛けていれば逃げなかったんじゃないかとも思ったが、菜摘の名前を出しただけで走り出したからやっぱり誰が行っても一緒だったかと思い直す。

『あ、怪しいものではありません。森と申します』

森はまたしてもあの名刺を差し出した。
KMR探偵社ってなんだよ。
その名刺を見て館林が吹き出した。

『ちょっと、館林さん!』
『あ、わりぃ、急に思い出し笑い。続けて』
『まったく…で、杉田さん、植野さんのことで何か覚えていることはありませんか?』
『特には…ありません』
『些細なことでもかまいません、なんでもいいんです』
『…すみません』

少し悩んだ素振りを見せたが何も答える気はなさそうだった。

『そうですか…』

森も困ったような顔をして思考を巡らせている。

『まどろっこしいなぁ』
『え』
『お前、菜摘のストーカーだろ』
『なっ……』
『お、おい館林!』

ド直球な言葉にみんな館林に注目する。

『お前が菜摘をつけ回してたってネタはあがってんだよ』
『……!』
『証拠だってある。目撃者がいるんだよ。菜摘をつけ狙うお前の姿が度々目撃されてる』
『……』
『まあいいわ。答えてくれねーんなら目撃者と一緒に警察にいくだけだからな』
『あ…』
『ほらお前ら行くぞ』

館林が立ちあがり鞄を持った。

『す、すみませんでした!』

杉田が今までで一番大きな声を出した。
館林やニヤリと笑い席に座った。

『で、説明してもらおうか』
『は、はい』

杉田の話では確かに菜摘をつけたりしたが見ていただけで失踪には関与していないそうだ。

『植野さんのことが好きだったんです。でも告白する勇気もないし見てるだけで満足でした』
『ふーん。見てるだけねぇ』

館林は納得していないようだった。

『見ていたのなら植野さんが失踪した日は分かりますか?』

夏休み中の失踪だったため菜摘が失踪した正確な日時は分かっていなかったのだ。

『はい。2012年の8月21日の夜です』
『さすがストーカーだな』
『すいません』
『その時のこと詳しく教えて貰えませんか?』