フィンガーマン

ナツミの通っていた学校に行ってみることにした。
館林は予定が合わず来られなかったが、森がついてきてくれることになった。

学校の名前はナツミに聞いていたのですぐに分かった。
個性的なファッションの学生たちがたくさんすれ違う。
俺が服にうといだけでこれがオシャレというものなんだろうか。

『で、来てみたけど、どうする?』
『とりあえず行きましょう』
『あ、おい!待てって!』

部外者がズカズカ入っていくのは躊躇われたが森は気にする様子もなく飄々と入って行ってしまった。
入ってすぐにガラス貼りの広い空間があった。
中では大人が行き交ったり座って作業をしていた。
受付兼教員スペースなんだろう。

受付の前に立つ。
俺たちに気が付いた若い男性が近寄ってきた。

『あの、何か……』

少し訝しげな視線を向けてきた。
当然だろう。
いかにも生徒ではないスーツ姿の男がアポなしで現れたら不振に思うのは無理もない。

『あ…その…』

何も考えてなかった。
なんて言えばいいんだろうか。

『あ、私たちある親御さんに依頼されまして6年ほど前の生徒さんの名簿を見せて頂きたいんです』
『依頼ですか…』
『はい、実は6年前に失踪した植野菜摘さんの親御さんに…』

森は声を潜めて言った。
相手の男は驚いた顔をした。

『し、しかし個人情報をお見せするわけには…』

そりゃそうだよな。
俺でもこんな怪しいやつらに見せようとは思わない。

『あ、申し遅れました、私たち探偵なんです。森と申します』

森は名刺を差し出した。
そこにはKMR探偵社と書いてあった。
いつの間にそんな名刺作ったんだ森。
この男のマメさ加減にはイチイチ驚かされる。

名刺を見た男はコロッと態度が変わった。
どうやら信用したようだった。

『探偵さんってほんとにいるんですね』
『はは、まあ』

男は若い教員のようで松本と名乗った。
6年前はまだ教職についておらず、植野菜摘とは面識がないらしい。
2012年前後の名簿を持ってきてくれた。

『植野……あった!』
『この名簿コピー取らせて頂いても?』
『あ、はい、どうぞ』

念のため持ってきて貰った名簿すべてをコピーする。
松本は快く学校のコピー機を貸してくれた。
こうやって個人情報が流出するのか…

『ありがとうございました』

森は名簿をコピーすると足早に学校を後にした。

『おい!いいのか?』
『なにがです?』
『どうせなら植野菜摘と面識のある教員から話を聞いた方が』
『ダメですよ』
『なんで』
『植野さんと面識があるってことは6年以上勤務しているってことですよ』
『それの何がいけないんだ?』
『怪しまれるでしょ』
『え』
『わざわざ若い教員に狙いを定めて対応させたんです』
『どうやって?』
『ガン見したんですよ』
『へ?』
『他の教員にはハンドサインを出して松本さんに用があるようにみせたんです』
『はーん』
『それで彼が来てくれたんです』
『お前…すごいな』
『やっと分かったんですか』