結局バタバタしてしまいゆっくり考察する時間は無かった。
二人して眠い目を擦りながらカフェに寄り道して仲良く出社する。

テイクアウトしたパンとコーヒー片手にあくびばかりしながら仕事をしているとあっという間に昼休みになっていた。

『なるほどな』

いつものように3人で食堂に入り、さっそく今までの経緯を館林に説明した。
ようやくじっくり考察出来そうだ。

『ナツミは何者なんだろう』
『自分が幽霊だって気づいてないとかですかね…?』
『うーん……』
『そうか!だったら納得いくな!』
『だとしたらやっぱ怖いっすね』
『幽霊じゃないのかもよ』
『へ?』
『じゃあなんで姿が見えないんだよ』
『パラレルワールドって分かるか?』
『あー、なるほど…』
『なんだよ、どういうことだよ』
『でも、そんなことってありえるんですかね?』

館林の言わんとしていることを森はすぐに汲み取ったようで置いてけぼりをくらう。

『平行世界とも言われていますね。例えば木村さん、今そば食べてますよね?』
『ああ』
『でももしかしたらうどんを選んだかもしれないですよね?』
『は?』
『つまりですね、今木村さんがそばを選んだ世界。それと今木村さんがうどんを選んだかもしれない世界。この二つの世界が平行して存在するという考え方です』
『はぁ』
『そういうことだ。そして俺が言いたかったのはだな、今お前がその家に住んでる世界とナツミがその家に住んでる世界があって、何故か二つの世界が繋がってしまっているんじゃないかってこと』
『そんなことありえるのか?』
『それは…知らん。パラレルワールドそのものがあるんだかないんだかあやふやなんだから』
『でもナツミの言葉を信じるならそれ以外考えられないかもしれないですね』
『つまりなんでかナツミの世界と繋がっちゃって音だけが聞こえるってことか?』
『そうだな』
『声は聞こえないのに?』
『そこはなんか都合よくいかないもんなんじゃないですか』
『なんだよ、いい加減だな』
『森の自分が幽霊だって気がついてない説も捨てきれないが、パラレルワールド説もない話ではないと思うぞ』
『そうですね、姿なき何者かから超至近距離でモールス信号が送られてくるなんて実際にあり得ないことがすでに起きてますからね』

館林の言うようにパラレルワールドならいいが、本当に幽霊だったらどうしてくれるんだ。
自分が幽霊だって気づいてなければ悪さはしないんだろうか。