分かっているのなら話は早そうだ。城に来たばかりの時にしていたように彼女を遠ざけてくれよ。城に来る前の関係に戻ってしまったら二人はきっと結ばれてしまう。せっかく作った俺の居場所が無くなってしまう。ただでさえ、今でも惹かれ合っている身なんだ。遅かれ早かれ時は来るんだろう。俺の望まない、俺以外の誰かと彼女が幸せになってしまう日が来てしまうんだろう。

「分かっているのなら聞くな」

俺が作り出した沈黙は、ゾーラ医師やリオディナにとって耐えがたいものであったと思う。俯き、俺とハウラムは眠っているように見えただろう。でも、ピリピリとした空気までは隠せていなかった。
俺もあいつも知ってはいるんだ。彼女を守るためには互いが一番邪魔な存在で必要不可欠な人材だって事に。認めたくないけれど、お互いがいなければ彼女の全てを守りきれないという事に。