真剣な話ばかりで気が重たくなるような空気の中にしかいなかった。悩みを相談されても一緒に悩んで終わる事が多かったし、良い機会かもしれない。今日を境に何か変わっていければ良いな。お嬢さんと俺の絆でも、ウィルとお嬢さんの絆でもない。俺とウィルの絆を築いていければ、俺の人生は更に楽しくなるかもしれない。

「よし。俺、この子を名前で呼べるくらい立派になってやる」

「お前、八重歯あったんだな。初めて見た」

今まで気が付かなかったのは太陽の光が眩しすぎたせいだろうか。月明かりに照らされたウィルの口元に、お嬢さんにはない八重歯があった。ゾーラ医師やリオディナ、ハウラムは八重歯というより牙だったからな。カーレイジも血を吸わなかったから牙はなかったし、八重歯と呼べる歯を見たのは初めてかもしれない。他の歯より鋭いけれど、牙ほど尖っていて大きい訳じゃないんだな。