単純な理由で良いのかと疑う半面、彼女らしくて嬉しく思える。人生、難しく考えすぎる事はないんだって教えてくれているみたいで安心するのかもしれない。人との関わりは確かに難しくて何度も壁に当たる。でも、彼女の気楽な面を見ると怒りよりも安心が先に迷い込んで来るんだ。

「単純で良いんだよ。遠巻きに伝えると何も伝わらないから、単純で簡単な言葉で充分なんだよ」

笑った彼女の裏には悲しいと泣いている顔があった。ちゃんと伝える事が出来なかったせいで亡くなってしまった命がここにあるのだとしたら、俺は彼女と一緒に頭を下げよう。単純で簡単な言葉の方が伝わりやすいって何で気付けなかったのかと悔やんでいる彼女の変わりに俺が責められよう。だって自分のせいでもないのに亡くなった命に目を腫らすほど泣けて、自分が奪ってしまった訳じゃない命を声にならないほど悔いているんだから。