俺たちはもう、あの頃のような仲ではない。姫と兵士という一線を引かれた関係になってしまったんだ。なのに、名前で呼べって言うのかよ。俺にお前の名前を言わせるのかよ。なぜなんだ。自分の名前を呼ばせて何が楽しいんだ。俺を苦しめると知っていながらなんで何度も呼ばせようとするんだよ。

「いい加減にしてくれ。俺は兵士でお前は姫。許される関係じゃなくなったんだ」

大体、今までも結構ギリギリだったんだ。世界の4分の1を収めるくらいの大きな力を持つ魔女である彼女と、世界の数十個あるうちの1つに仕える小さな兵士だった俺。元国王の歳が離れた友だというから出会えたものの、元国王がいなかったら出会う事もなかったはずの二人。
夜な夜な俺と一緒に城を脱け出しては未だに彼女を頼ってきている者たちの相手をしてはいるが、一緒にいるのは姫である彼女を守る義務があるから。俺はただ、自分の使命を果たしているだけにすぎない。