彼女が先に感情を溢れさせた所を見たのは、たぶん初めてだ。彼女は珍しく自分から1歩、前に踏み出すと感情のままにハウラムを抱き締めていたんだ。それはまるで、離れていってしまう恋人にもう少しだけ待ってくれと遠慮がちに甘え、出来れば行かないでほしいと願う女のよう。別れ際に少しだけと言って愛を求める女のよう。そして、抱き締め返すハウラムもまた、恋人との別れを惜しむ男のようであった。最初はそっと、体に手を添えるだけであったのにどんどん力が込もり、壊れてしまうほど強く抱き締めてしまっているんだ。
「差し支えなければ教えてくれ。お前の約束は母親との約束、元国王の殺害で間違いないな?」
ゾーラ医師は壁にもたれ掛かりながらも、ハウラムをしっかりと見つめていた。母親との約束か。実の母親と生まれてすぐ離れてしまったお嬢さんが止められないわけだ。
「差し支えなければ教えてくれ。お前の約束は母親との約束、元国王の殺害で間違いないな?」
ゾーラ医師は壁にもたれ掛かりながらも、ハウラムをしっかりと見つめていた。母親との約束か。実の母親と生まれてすぐ離れてしまったお嬢さんが止められないわけだ。



