学校の宿題を済ませ、弁護士の勉強に取り掛かろうとした時、お腹が鳴った。
ふと、時計を見る。
9時35分。
学校の勉強に3時間も掛かってしまった。

今日も親はいない。
父はイギリスへ出張。
母はドバイへ旅行。
帰ってくるのは一週間後。
あの人達帰ってこようが帰って来まいが、私にとってはどうでも良い事だ。
どちらにせよ、あの人達は私に興味が無いのだから。
家にいたっていつも「マリアマリア」って。
私の事を気に止め様としない。
あの人達はちゃんと私が見えているのだろうか。
たまにその疑問が浮かび上がってくる。
授業参観だって私のクラスを見に来た事ない。
体育祭だって桜花、桜蘭、桜音、桜才の4つの学園合同なのに、私の競技を見た事ない。
私がインフルエンザになった時だって、咳が出た妹を病院へ連れてった。
いつも妹優先だ。
一度も私の事優先してくれない。
アルバムだって妹の方がたくさんある。
でも、もういいんだ。
私は長年続いた、妹の優先にはもう慣れてしまった。

妹は私と違って人を惹き付ける魅力があるんだ。
可愛くて正義感があるし、勉強も出来る。
あの人達はそんな妹を自慢にしている。
いつも妹に掛かりっきり。
妹の事しか考えていない。
私は両親と気安く戯れた事などない。
会話もずっとしていない。

だけど一度殴られた事がある。
それは私が妹に対して『うらやましい』と言った時。
私と違って丈夫な体じゃない妹を・・・。
『あの子がお前を走り回っている姿を見て、どれほど自分の惨めさを感じたか。お前にはわかるか!?』
初めて見た父の涙。
父の目からは紛れもなく、妹への情だけが流れた。
分かっていたはずなのに、実感していたはずなのに・・・。
私はその時改めて実感した。
私は必要とされてない。

夕食を買いにコンビニへ行く為ら私は部屋から出て、階段を降りた。
玄関では彼が妹と会話をしながら靴を履いていた。
私はそれを見て見ぬ振りして靴を履く。

「あ、マリアちゃんだー。こんな遅くにどこ行くのー?」
彼は首をかしげた。
「別に」
「えー?危ないから送るよー?」
「コンビニ!」
「こんな遅くにどうしたの?」
「・・・ご飯!」
ああダメだ。
彼のペースに流される。
「マリアちゃん、ご飯なら私つくったよ・・・?」妹は胸に左の挙を置き、弱々しく上目づかいで私に言った。
「・・・誰があんたの作ったもの何か食べるか」
妹をにらみつけ扉をあける。
「僕が送るってばー」
いい、そう断ろうと振り返ったら妹が目に入った。
ああこの目。
この、彼に向けている視線。
それは恋をしている目だった。
私はため息を吐いて外に出るそして真っすぐコンビニへ向かう。
後ろから何度か呼び止められたが、全て無視をした。
そうか。
妹は彼が好きなんだ。
彼の様な人が良いのか。

「ねぇ待って!」
突然彼に手を掴まれ、足が止まる。
「・・・何?」
「送るよ」
「そんなのいい」
「送るって」
「いい!」
「・・・送るから」
そう言った声は優しいけど、何処か有無を言わせない声だった。
私に合わせて、彼も歩き始める。

「・・・ねぇ」
沈黙を破った彼のは彼だった。
「何?」
「どうしてマリマちゃんの作ったご飯食べないの?」
「は?」
何をいきなり言い出しているのだろう。
「美味しかったよ?」
そうやって無邪気に笑う君の笑顔に、何故か少しイラついていた。
「別に」
「んー喧嘩してるの?」
「・・・別に」
喧嘩か。
そんな単純な物なら良かったのに・・・。
「マリマちゃん、物凄くアリアちゃんの事気にしてたよ?」
始めはその一言だったその言葉にイラついた。
「はぁ?気にしてた?私の事を?」
「うん。もう仲直りしたら?」
彼の言葉は本当にその通りだ。
だけど・・・。
「妹は、私と喧嘩してるって言ったの?」
「あ、そうだね。そんな感じに言ってたよ」
そうか。
あの妹が喧嘩してると言ったのか。
だけど・・・。
「私は妹と喧嘩してない」
「・・・え?」
「妹は喧嘩してるって言ったけど、私は喧嘩をした記憶がない。そもそも、私と妹は喧嘩する程仲が良くない。」