私の頭から包帯が取れ、口の中の裂傷も治り、肋骨もほどほど大丈夫。

暴れたりしたらまた入院だが、大人しくしていれば問題ない。

私の事故からしばらく、やっと退院して頼とアパートへ。

家主の居ない部屋は誇り混じりの空気。

頼はすぐ隣のアパートだとこの時初めて知り、離れる運命にないと改めてわかった。



「 頼… 」

「 ん~?」

「 凛は私を嫌いになったのかな… 」

「 凛が?あり得ないね、あの凛だから 」



凛はあの日以来、私の前に現れない。

しかも、凛はこの地にいない。

語学留学をしたと聞いている、きっと私を避けているかと思うと苦しくてたまらない。



「 頼、私ね… 凛の声がないとダメみたい 」



毎日私の感情を乱す幼馴染みの可愛い奴。

私の名前をうるさいくらい呼んでた声が恋しい。



「 やだなぁ 私としたことが、涙出てくる 」

「 だってお前は女じゃん、羽奈っていう女だろ?ほら来いよ、凛の変わりに胸貸してやるから 」

「 バカヤロー 凛のバカヤロー… ふぇっ… 」

「 はいはい、よしよし 」



頼の胸板をしっかり濡らすほど泣いた。

そんな声を出してまで泣きじゃくる私の姿を、頼は密かに写真を撮っていた。

当然、その写真は遠く離れた凛の元に送られていた。



「 ……頼兄のヤロー、俺の羽奈をっ 」



凛の怒りは変わらず羽奈への愛情の証。

頼からの羽奈の写真を見るたびに離れた事を後悔する凛だった。