人の背中しか見えないや。
どうしよう、ここどこか分かんない。


その時、後ろから強い引力で引かれた。
ぐいっと掴まれた腕。
その引っ張った本人の胸に背中がぶつかる。
上を見上げてみれば。


「け、剣崎くん。」


浴衣姿の剣崎くんがいた。
や、やばいどうしよう。
剣崎くん、すっごく浴衣似合う……。


身長が高いのもあってモノトーンの浴衣がよく似合っていて。
普段見慣れない姿に胸が高鳴った。


「大丈夫か?小梛。」


「う、うん。ありがとう……。」


掴まれた腕が熱い。
触れた所からじわじわあたたかくなっていく。
どきどき、バレちゃいそう……。


「浴衣、似合うな……。」


「えっ。」


褒め言葉に驚いて剣崎くんを見ると。
赤い顔で、目を斜め横に向けていた。


が、頑張って良かった。
おめかししてきて良かった。
似合うって、言ってもらえちゃった……。