身体中が熱いのを夏のせいにする。
少し、汗かいたかも。


その後はお互い無言でご飯を食べ続けた。
私も剣崎くんも。
顔の熱が引いたのは、お昼の終わりのチャイムが鳴る頃だった。


結局私は、お付き合いを断ることを言えずじまいで。
でもその代わりに。
剣崎くんの印象が変わった。


噂ほど怖い人ではないのかもしれない。
少し、ほんの少しだけそう思った。


パシリとかそういうの言わなさそうだし。
お弁当は自分で作ってるし。
照れたり、はにかんだり、赤くなったり。
普通の人とあんまり変わらない気がした。


それにさっき気付いたんだけど。
剣崎くん、靴はかかと踏まないんだよね。
きっちり履いてるし。
ズボンもちゃんとベルトしてた。


お箸の持ち方も綺麗で。
なにより爪が綺麗だった。
料理するからかな。
丁寧な爪の切りかただった。


後は少し猫背気味。
立っている時より近くにいる気がした。


顔を見れないから、下ばかり見ていたら。
気付かなかった剣崎くんを少し知れた気がした。
だから自然と怖い、感情がなくなっていて。
少し知りたい。