☆君との約束




「覚えてるよね?……俺が刺されたこと」


「……っ、ぅ、ん」


「莉華はそれからが、思い出せない?」


「……ずっと、陽向に会ってたことは覚える……」


「うん。逢いに来てた。君に覚えて貰えるように」


膝の上で眠ってしまった、ふたり。


莉華に手を広げるように行って、彼女の腕の中に眠りに落ちそうな相馬を渡す。


「可愛いでしょ?」


「……っ、うん」


「その子、春馬の次男だよ」


「……えっ?」


「色んなことがあったんだ。本当に、色んなことが……話したいことが、たくさん……っ」


「陽向……」


「お願いだから……」


情けないよね。分かってる。


でも、君を失ったら、生きていける気がしないよ。


言葉を切って、優しく、相馬と依の頭を撫でてやる。


頬には変わらず、涙が伝ってた。


でも、君にはわからないだろうね。


どうして、俺がこんなになっているのかとか。


二人に、術をかける。


すっ、と、眠りの世界に落ちた二人。


すやすやと寝息を立てる依と相馬を隣のベットに横たえて、俺は莉華に近付いた。


「お願いだから……何?」


莉華は、待ってくれる。


四十路の男が泣くなんて、本当に情けない。


「お願いだから……離れるなんて言わないで……」


でも、伝えずにはいられない。


君は、現実を知るために戻ってきてくれたって、信じてもいいよね?