『……それで、良いんだね。陽向兄さんは』


電話先で、少しくらい声。


「良いんだよ。それより、千華、元気にしてる?」


『うん……兄さん達の気遣いで、意外と住み心地はいいよ。朝から、高層マンション最上階から降りて学校行くのはかなり手間だけど、まぁ、御前の監視もないしね』


「ごめんね、そんな生活をさせて」


『どうして、兄さんが謝るの。―和子さんもおかしいんでしょ。私、御園の力、継承しようか?』


自由になりたい。


縛られたくない。


そのために、高校生になったら、世界に行くと言った千華。


考古学者では無いけど、そういう感じの、世界の遺跡などを見て回るような、所謂、冒険家みたいな。


そんな一生を送りたいらしい。


必要であれば、結婚はする。


でも、家のための結婚はしない。


俺と莉華、陽希と魅雨みたいな、お互いが全てみたいに思える相手と出会えたら、その時にするそうだ。


ロマンティックで、自由でいい。


「一応、高校はうけるの?」


『まあねー。父さんと母さんに言われちゃったし……高校生の間は、交換留学って形かなー』


はぁ、と、ため息をついているけど、まぁ、仕方がない話だ。


「きっと、心配してるんだよ。特に、父さん。千華は母さんによく似ているし、母さん、家出してから十何年も帰らなかった強者だし、父さんからすれば、千華は願うに願った、待望の女の子だし。出された条件も、そんなに難しくないんでしょ?だったら、ちゃんとクリアして行く方がいいだろうね。―あ、定期的に、俺にも連絡ちょうだいね」


『言いたいことを、相変わらず、一気に……分かってるよ?分かってるけどさぁ……』


ブツブツと文句を言う、千華。


まぁ、流石に千華が小学生になるまでは家にいたふたりだけど、千華が小学生になった途端、あっちに居を構え出したからね。