それを考えると、俺達はきっと、春馬にかなり酷なことをしているのだと思う。


家のことが解決した今、傷つけないように、和子をどうにかすることは出来ないだろうか?


「……陽向さん」


「ん?」


「幸せだね」


「……」


片や、最愛の妻を失った、シングルファザー。


片や、最愛の妻を追い込んだ、加害者夫。


本当に、ちゃんと考えてみたら、幸せなんて言える状況ではないと思う。


それでも、そう思えてしまうのはきっと、彼女たちの言葉が、存在が、温もりが、笑顔が、彼女たちとすごした一瞬一瞬が、俺たちを生かしてくれているから。


「……幸せ、だね」


誰かが幸せになれば、この世界では誰かが悲しむ。


自分が幸せになる代わりに、この世界の誰かが必ず悲しむんだってこと、分かってる。


分かっているけど、仕方ないよね。


俺たちだって、幸せになりたい。


そう思っても、いいだろう?


「これから、どうするの?」


「……気長に、待ち続けるよ。前は待たせたからね。今度は、俺が『おかえり』って言うんだ」


それが、何年後になろうとも。


必ず、生きて待ってるよ。


君が先に、死んじゃうかもしれないね。


でも、それでも、必ず、言い続けるよ。


『愛してる』って。


―とりあえず、君に、"おかえり”って言える日まで。