「息子さん、元気?」


「ええ。メチャクチャ。四歳になるのに……可愛いよ。とても」


「いつか、莉華と遊んでくれるかな」


完全なる親バカだけど、でも、その点なら、俺もかなりの嫁バカだから。


「喜んで」


久貴も、父親になった。


あれから、10年も経つんだと思うと、何か感慨深い。


「そういえば……甘寵殿、廃止できたって?」


敬語を使われると、どこか苦手で。


家のものを相手している気分になるからなのか、とりあえず、彼にはタメ口でお願いしている。


すると、名前に敬称は付けてくるものの、言葉に容赦がなくなって。


「やっと、ね」


「御前の当主もまた、変えたって……」


「すっごく、面倒くさかったけど。……これで、少しはマシになるといい」


「……春馬さんは?」


「……相変わらず?」


「長女が生まれたそうで」


「逆らえないんだよ。―逆らったら、和子が死ぬと脅すから」


そう言われて、従う方もどうかと思うが……。


「止めないの?間違っているの、分かってるくせに」


「……止められなかった」


「え?」


試みたことは、幾度もある。


実は、昨日も……。


「でも、ダメだったよ。今度は、総一郎たちを殺すって言うんだ。誰が逆らえる?彼女は初代の舞で、人を殺すことが出来ることを知っていて」


子供に罪はない。


あんなにも純粋な子供たちを、まだ、あの家の闇に浸らせるのは早すぎる。