☆君との約束




『……陽希』


『ん?』


『…………ありがとう』


目を閉じると、自然と頬を濡らす何かがあった。


『馬鹿野郎……』


陽希はそう一言言うと、優しく、頬を拭いてくれていた。


『陽希、私、何か飲み物を買ってくるね』


『あ、じゃあ、俺も一緒に』


世界のことをひとつずつ学んで、成長過程にいる魅雨は妊娠中で、少し大きくなったお腹を抱えてた。


気を利かせてか、それとも、そんな魅雨を心配してか、ついて行った久貴くん。


『喜んでたのになぁ……っ』


『……』


『莉華、魅雨の子を抱くの、楽しみにしてるって……』


『……』


『それなのに、俺が壊した』


『……』


謝っても、謝っても、償いきれない。


『愛しているのに……この気持ちだけは、嘘なんかじゃないのに……こんなことになるのなら、俺は愛さなかった方が……』


―瞬間、身体が浮いた。


そして、壁に打ち付けられて。


痛みに、顔をゆがめる。


『馬鹿がっ』


陽希はそう吐き捨てると、俺の額をデコピンして。


『お前が、そんな弱気でどうするんだ。うじうじうじうじ……俺の弟らしくねぇ』


片手で頬を挟まれて、何も言えない。


『愛しているんだったら、最期まで、その気持ちに責任もてよ。巻き込むってわかって、結婚したんだろ?だったら、ちゃんと最期まで、言葉に自信と責任は持ち合わせとけ。それが出来ねぇんだったら、人なんて愛すな。馬鹿野郎』


鈍感で、女の気持ちには気づかなくて、和子の思いに未だ気づいてすらいないくせに、俺に説教垂れて。