『陽向さんこそ……苦しいなら、苦しいって言ってください』
―見透かされた。
莉華は、どれだけ潰されたんだろう?
莉華を追い詰めた女を、父親諸共、社会的に殺してやった。
結果、襲いかかってきた。
セキュリティーの酷い、あの家の中までだ。
もちろん、誘導した人間がいて。
それは、俺が昔好きになりかけて、裏切られた女で。
身柄は拘束されているみたいだし、今度こそ、社会的だけではなく……ああ、何で、こうなんだろう。
どうして、まともに生きることを許してくれないのか。
許してくれよ。
俺達はただ、幸せになりたいだけなんだよ。
どうか、どうか―……。
『早く、元気になれ。馬鹿陽向』
『陽希』
『やるんだろ?……最近、家の中の空気がおかしい。徹底的に、俺たちを駆除するつもりらしい』
『……親父と母さんは?』
『報せは飛ばした。あっちもやばいみたいだからで、ちゃんと逃げてもらっている』
この時の俺達は、二十八歳。
家から出る決意をしたのは、二十六歳の終わり。
魅雨と陽希が良い感じになって、結婚する寸前。
実際に家から逃げようとしたのが、二十七歳。
そして、寝込んでいる間に、二十八歳になってしまったらしい。
自分でもびっくりするような、誕生日の迎え方である。


