『莉華……?』
俺が名前を呼んでも、返事は返ってこない。
『莉華っ!』
声が、張り裂けそうだった。
でも、その時になって、痛みが―……俺は、意識を失った。
人外の血が入った、己の身も限界だった。
次に、目覚めた時。
俺は、病院のICU(集中治療室)にいた。
そこは、倉津医師の伝手によるもので。
俺を看たのは、倉津医師と久貴くんらしい。
そして、事の顛末を聞いた。
『……また、世話になったね』
『無理するの、好きなんですか』
元気がなさそうに、訊ねられる。
どうして、元気がなさそうなのかって?
理由は簡単だ。
―莉華が、壊れてしまったから。
結局、適応障害なんて可愛いもので済まなかった。
俺は守りきれなかったのだ。
彼女は入院ではなくて、そういう施設に入ることが決まった。
そして、俺は莉華を追い詰めた奴らを、徹底的に潰すことを決意した。
そこの施設だったら、絶対に手を出せないことに気づいたから。
『……助けてくれて、ありがとう。約束を守ってくれて、ありがとうね。久貴くん』
『でも……俺、莉華さんは……』
『莉華は、心の病気だから。仕方ないよ。専門外でしょう?』
『それでも、それでは医者と言えない』
『真面目だね、久貴くんは。そんなに無理しなくていいと思うよ?』
笑っていたつもりだった。
鬼の血のおかげが、回復はすごい早かったみたいで。
笑いかけると、久貴くんは苦しそうに。


