☆君との約束




『陽向、嬉しそう……何かあったの?』


気を利かせて、皆が出ていってくれた、二人っきりになった部屋の中。


全身があったかい莉華を抱きしめて、俺は珍しく、涙を流した。


『陽向、陽向……っ?』


『心配、掛けないでよ……莉華……』


『……っ、ごめんなさい』


『違う。謝らせたい訳じゃなくて……』


ありがとう、ありがとう。


ありがとう、生きていてくれて。


ありがとう、愛してくれて。


ありがとう、離れないでくれて。


『愛してる』


―あのまま、死なないでいてくれてありがとう。


君をまた、愛せる権利を僕にくれてありがとう。


言いたいことは沢山あるけれど、上手く、言葉にならなくて。


『フフッ、急にどうしたの?―私も、大好き』


幸せな、時間を。


これから、共に歩もう?


『あのね、魅雨が、妊娠、確実だって』


『っ、本当?』


めちゃくちゃな人生かもしれない。


もっと、もっと、迷惑かけるかもしれない。


それでも、君といたいんだ。


『フフッ、生まれるの、どっちかなぁ。抱っこさせてくれるって、前言ってくれたんだよ』


君といる時だけ、自分は生きていると思える。


生きていけると、思えるんだよ。


君と笑い合っている間だけ、息をつける。


これから先も、生きていこうと思えるんだ。


幸せ。


それを、君に教えてもらった。


―でも、その幸せも束の間で。


『―あんたのせいでっ!!』


突然、開いた障子。


陽希たちが出ていった方向とは、逆の。


『陽向っ!』


―一瞬の出来事。


莉華の声で、振り返った俺の胸に刺さった、ひとつの刃。


体が傾いて、莉華の布団を赤く染めて。


『あんたがいたからっ、あんたのせいでっ!!何でっ、幸せに笑うのよ!?私から全てを奪って……っ!』


違う、違う。


お前から、全てを奪ったのは、俺だろう。


どうして、莉華を責めるんだ。


やめてくれ。


彼女は、俺の―……。