『やるんだったら、徹底的に叩こうぜ』
『私も手伝うよ!』
魅雨は漸く、家とのいざこざが何とかなりそうで……自分の力を恐れているのに、そんなことを言ってくれる。
そして、魂の片割れの兄もまた、こんなにも優しくて、俺には痛いほどに真っ直ぐで。
『何があっても、助けてあげる。だから、思い存分、貴方はやってもいいよ』
笑顔で、君も力になってくれる。
『―……ありがとう』
言われてみれば、色々と我慢していた気がする。
手を出さない方が、黙っている方が、抵抗しない方が、きっと、莉華を守れると勘違いして。
違う。
守りたいものがあるのなら、その身を犠牲にしてでも、やれることはやらなくてはならないんだ。
その覚悟がないと、ここでは生きられないことを知っていたのに。
それから、三日後。
目覚めた莉華は一番最初に、俺を求めてくれた。
ぼんやりと宙を見つめながら、魅雨に話しかけられて、一番に、俺の名前を呼んでくれたんだ。
『莉華っ、』
抱きしめた。
もう、離したくなんて無かった。
彼女が眠っている間、多くのものを処分した。
大人しくしていた反動のように、鬱憤晒しで集めていた全ての情報を開放したのだ。
案の定、叩かれまくった御前の当主やその他諸々の女達は、御園の家から永久追放、そして、社会的にも行く宛は無くなって、またひとつ、恨みの花を家紋に刻みつけた俺だったが、それでも、心は軽くて。


