『……凄いね』
『え?健斗が?そうだなー、あいつは凄いよ。俺から見ても、とてもじゃないけど……』
『うん。彼もそうだけど、君も』
俺は結局、口ばっかりで。
守りたいって、そんなことばかりで。
周りが見えなくなっていて。
『……莉華を、助けてくれてありがとう』
俺の唯一無二の、大切な人を。
細くなりすぎた身体は、まるで、春馬を抱き上げた時並に軽くて。
その事に、少し涙がでる。
『……陽向さん、本当に彼女が大事なんだ』
『うん。めちゃくちゃ、大事。彼女がいない世界なら、一秒たりとも、いることが嫌になるほどに』
『わぁ、ベタ惚れだ』
『ね、自分でもびっくりだ』
執着なんて、するつもり無かった。
したって、ろくなことにはならないとわかっていたからだ。
でも、そんな俺の思いをも飛び越えて、莉華は俺の世界に飛び込んできてしまったから。
『大切にしてあげて。それでもし、何があっても、必ず、俺が助けてあげるから』
『本当に?』
『ああ!医免は持ってないけど、大学に入ったら、すぐにとるよ。だから、あと、六年ほど我慢してもらわないとだね』
『天才でも、大変だね?』
『そっかな。でも、その間、存分に沙織といれるし、薬の研究もできるし、俺は俺の人生をそれなりに満喫していると思うよ』
楽しそうに笑う姿は、ただの青年そのもので。


