『てめぇみたいなのが、上に立つから、この国は腐っていくんだ。とっとと、退け。クソ野郎』
―抵抗なんて、出来ただろうか。
一気に距離を詰めた彼は、当主の口に何かを放り込んで。
当主は慌てるあまり、それを飲み込む。
『っ、なっ、何を―……』
『さあ?効き目が出てくるまで、怯えて生きてみればいいんじゃない?』
ニッコリ、久貴くんは笑って。
『じゃあね、おじさん』
ひらりと手を振ると、
『陽向さん、莉華さん連れて、ついてきて』
と、言われた。
小さく頷いて、莉華に手を伸ばそうとすると。
『ひっ、陽向様っ』
『助けてくださいっ、私は貴方を支える為に―……っ』
助けを求める目を、奴等は向けてくる。
―知らないよ。
要らないよ、あんたの助けなんて。
心は自然と、冷めきっていた。
さっきまでは、あんなにも怒りで震え上がっていたはずなのに。
『……』
―彼女達は俺と目が合うと、黙り込んだ。
そして、ただ、震えるだけ。
無言で、俺は莉華を抱き上げて、春馬を連れて、部屋から出る。
『―陽向っ』
騒ぎを聞き付けたのか、急いで帰ってきたらしい魅雨と陽希。


