千華を授かったと、母から聞いた時。


僕の横で喜んでくれた君。


あれから、十三年。


何があったと思う?


始まりは、本当に些細なことだったんだ。


妊娠しても、流産する日々。


その度に、莉華は人目につかないところで泣いて、苦しんで、それを僕に言うことも無く。


違うだろう。


その流産は、君のせいじゃないだろう?


たまに見れば、増える包帯。


階段から落ちたり、


毒が盛られていたり、


たまたま持ったものに、凶器が仕込まれていたり。


日に日に増えていく痛みにすら、君は笑顔で耐え続けた。


『陽希!』


『陽向?』


『莉華は!?』


『え……』


『莉華を見なかった!?』


"不思議なくらい”僕らの前から姿を消してしまう君を、毎日、毎日、探し回って。


見つけた時は、いつも、気を失っていた。


何かが君を襲ったのは間違いないのに、


『大丈夫だよ』


―……君はいつも何も言ってくれないから、結局、真実は闇の中に消えてしまって。


そんなことばかり相次ぐから、子供は無事でいられるはずもなくて。


その度に、君は泣き腫らした目で、僕に言ってくるんだ。


『ごめんなさい』って。


それが、辛かった。


『気にしなくていいんだよ』


そういう毎日。


授かる度に、喜んでいる君は既にボロボロだった。