☆君との約束




甘寵殿に現在いるのは、8人の女。


元は、10人だったのだが……"不慮の事故”で亡くなってしまった。


―表向きは。


そして、今、御前から差し向けられたこの暗殺集団は、抗えぬものを人質とされた、哀れなもの達だ。


「殺さずに、帰るぞ。気絶させれば、それでいいだろう。そして、お前は考えろ。俺が道を開けるから」


バサバサと、斬り捨てていた陽向。


すぐに手当てすれば助かるだろうが、十中八九、御前は見捨ててしまうから。


俺は、御前には通じない力で、彼らに言った。


要するに、伝心力である。


鬼のものに備わり、鬼から遠い御前には察せない。


使われているのは、御堂のものだ。


いつだって、御前は御堂を使い、我らに逆らう。


父の若い頃の事件も、それで若い御堂のものが多く亡くなり、今、御堂は衰退の一途を辿ってる。


―傷を治してやるから、直ぐに身を隠せ。人質の身は保証しよう。


御園に来てから、俺には"鬼の力”というものが目覚めた。


それは御園の血によるものであり、家の空気とリンクして目覚めたのだろうと、父は言った。


さぁ、これで、敵はいなくなった。


自分の命を捨てて、人質を救っても、人質は喜ぶことは無いだろう。


みんなが笑っているためには、みんなが生きて帰るしかないんだ。


その為に、御前を潰さなければならない。


「『―世界は救わなくていいから、大切なものだけ、ちゃんと握りしめておけ。家のために生きなくていいから、自分のために生きろ』」


敵のいなくなった暗闇を見ていると、背後でそう、陽向が呟いた。


それは、父が昔、俺らに言った言葉だった。