「莉華……」
涙が溢れた。
君に勝つのは無理だと思った。
君はきっと、これからも俺に勝ち続ける。
それで、俺は負け続けるんだ。
君が俺を愛してくれる以上に、
俺は君を愛すよ。
守るよ。
だから。
「幸せに、なろう……幸せになって……俺と」
すると、莉華は顔を綻ばせて。
「はい」
少しだけ、涙ぐんで。
「不束者ですが、宜しく御願いします」
―そう、応えてくれて。
傍から見たら、笑える茶番劇だろう。
四十路にもなって、何をやっているんだって。
馬鹿みたいな話だろう。
俺の事を嫌いになる人も、
莉華を嫌悪する人もいるだろう。
でも、それでいい。
他者になんてわかってもらわなくて、結構だ。
これが、俺たちの恋の形。
愛の形。
何があっても、愛すと誓った。
おはようと言ったら、
おはようと返ってきて。
行ってらっしゃいと言ったら、
行ってきますと、返ってくる。
いただきますと、共に食事を取って、
ご馳走様と、恵みに感謝して。
おやすみと言ったら、
おやすみと返ってきて。
君がいる生活。
当たり前のように見えて、
この世界で一番、不安定な幸せ。
そんな当たり前の、
奇跡のような毎日を、
君と過ごしていきたいと願った。


