「依はね、両親がいないから。……その分、愛情をあげたいんだ。ずっと、莉華は俺の大切な奥さんだよって教えてたせいか、間違って、『お母さん』って呼んでしまったみたいだけど」
「……」
「別にいいよね?相馬は……春馬がいるし、色々と問題はあるかもしれないけど、事実上、依は俺達の子供ってことで、縁組してあるし」
それが原因で、莉華は戻ってきてくれたみたいだし。
「……"お母さん”、かぁ」
「いや?莉華が嫌なら、別の呼び方をさせるけど……りっちゃん?とか?相馬は莉華のこと、そう呼んでる」
すると、莉華は微笑して、首を横に振って。
「少し照れるけど……良いかもね。そういうのも」
「……」
「なったことないし、自分がふさわしいとも思わないし、三十代をすっ飛ばしたような人生だし……私よりも、依ちゃんの方が賢いかもしれない。でも、陽向の傍で生きると、十六年前に……ううん、あの想いが通じた時から決めているから。陽向が決めたことなら、私も賛同したい。陽向が今でも私でいいと言ってくれるのなら、尚更―……」
自信なさげに、でも、俺が好きな強い瞳で。
「―莉華がいい」
「陽向?」
「莉華じゃないとダメ」
「……」
「好きだよ、莉華」
愛してるって、何度繰り返しても足りない。
そんな時は、どうやって、この愛を表現したらいいだろう?
めちゃくちゃに抱きしめる?―ううん、きっと、もっと、別なように。


