「……」 陽希は、無言でその場を去った。 妻を迎えに行くのだ。 「魅雨」 名前を呼ぶと、彼女は顔をあげて。 「陽希」 自分を認めて、微笑み返してくれる。 それが何よりも幸せで、だからこそ、陽向の姿が痛々しくて。 「紗雨は?」 「寝てるよ」 魅雨が抱える、小さな宝物。 莉華を壊した、残酷な新しい命。 「莉華に会いに行くか?」 「会いたいけど……また、今度の機会にするわ。紗雨もいるし、莉華、赤ちゃんのことには敏感になっているだろうから」 魅雨の懸命な想いに、俺も同意する。