全ては自分が悪いのだと

魔法界で一、二を争う有名一族である神崎家の長女でありながら

人間界の魔法使いに負けるなどと前代未聞のことだと

あの少年に───人間界の魔法使いに負けた今

誰も、助けてはくれないのだ

弱者を助ける者など存在しない

兄でさえ

母でさえ

父でさえ

祖父でさえ

友人でさえも

周りの使用人たちも

強くならねば、構ってはくれない

助けてはくれない

自分で強くならねばいけない

いや、そもそも助けてくれとか構ってくれとかは期待していない

もう、幼い頃から構ってくれるのは兄と唯一の親友だけだった

だから

一人で

強くなって

見返してやると

褒めてもらおうと

神崎家の恥にならぬように

強くなろうと

「決めた・・・・・・」

少女は呟いた

室内には、沈黙が訪れ

夕陽が射し込む

オレンジ色に照らされた彼女の顔は

"強くなる"

強い決心を思わせる

そんな表情だった



そしてその後

祖父から直々に

告げられた

「人間界の魔法学園に行け」と

少女は二つ返事で了承した

元々、分かっていたから

「彩音」

祖父の部屋から出ると、声をかけられた

実の兄

神崎聖夜

「人間界に、行きます」

「・・・・・・気をつけてな」

兄は───聖夜はそれ以上何も言わずに去っていった

寂しげな背中

それを見ながら少女は目に涙を浮かべ

人間界へと降り立つ準備を始める

そして、誰からも見送られず

誰からも声をかけられずに

少女は旅立った