「帰るから離せよ」



「やだっ。お願い彼氏になって」



女の扱いなんて慣れてるし、この手を振り払うのなんて簡単。



この子をなんとかして、さっさと千衣のところに戻らないとな。



「ごめん、運命の人は他当たってくれよな」



「そんなこと言わないで!お願い」



「んー…どうしたら離してくれる?」



「付き合ってくれたら」



満面の笑みを浮かべ、全く引く様子なんてない。



「しつこいよー。陽向くん嫌がってるじゃない」



「まりあ!」



いつの間にか俺らの脇に、花園女子の女がひとり立っていた。



こんな子いたっけ?



と思うような、超絶地味な女。



ヘアアクセもアレンジも特にしているでもなく、何の変哲もない肩上に切りそろえられた黒髪。