千衣の家の前で深呼吸。



「ふーっ…」



「あら、千衣に用事?」



「おおうっ」



びっ…びっくりした!



千衣の母ちゃんだ。



ちょうど庭で洗濯物を取り込んでいたらしく、両腕に衣類を抱えて立っている。



「そーです!約束してるんで、あがりますね」



「どうぞ~。陽向くんがうちに来るの久々ね。学校でモテてるらしいじゃない。千衣に構ってる暇なんてないでしょ」



あいつ家で俺の話題だすんだ?



へぇ…。



「女友達は多いっすけどねー。好きな子は千衣だけなんで。じゃ、上行って来ます」



「あらあら…びっくり。千衣は知ってるの?あの子鈍感だから」



俺は特に答えず、笑顔だけ見せて家の中に入った。