よく分かんないからマスターに任せちゃお。


「俺はいつものでえぇから」


海さんは慣れてるだなぁ。


「彩羽ちゃん彼氏おらんの?」


手際よくお酒を作ってくれたマスターが聞いてきた。


お酒は女の子っぽい見た目で、甘口だ。


「美味しい」


私はニコリと微笑む。


恋愛の話を拒むように。


「彼氏は?」


マスターしつこいなぁ。


「マスターには関係ないでしょ?」


彼氏なんか作ったことない。


渚に会う気はないけど、会いたいって気持ちもある。


正確に言うと、会うのが怖い。


私は渚を裏切ったし、黒龍を裏切った。


渚が銀狼だって知って、渚への気持ちは冷めたと思ってた。