海を裏切ったんだから。


私は。


「久しぶりやな。元気にしとん?」


海の瞳が、私の左手の薬指で止まったことに私は気づいた。


「元気…」


曖昧に笑ってその場を逃れようとするけど、海はそれを許してくれなかった。


「結婚したんや。アイツと?」


「……うん…」


ごめんなさい…。


結婚したいね、なんて海と話したのに……。


結局私は…。


「なんでそんな顔するねん。いいことやん。結婚。おめでとう」


…そんな私に海は何で優しい笑顔を向けれるの?


「……ありがと…。じゃあ私…急いでるから……」


これ以上海と喋れない。


無理だ。


耐えられない。


「…ほなまたな。会えるか分からんけど」


「うん……」