ぎゅうっと、仁くんがさっきよりもきつく私を抱きしめる。
本当に苦しかった。
仁くんが遠くに感じて、嫌だった。
「大丈夫。もう邪魔者は消えたんだ。
安心して僕に愛されていたらいいからね。」
甘く私に囁く仁くん。
「本当に……よかった……」
私も仁くんの背中に手を回して、しがみつくようにぎゅうってした。
「僕もね、何度限界を超えそうになったことか。別れようと言われた時、僕は死んでしまおうと思ったくらい。」
………そんなに?
そんなに仁くんも追い詰められていたの?
「その後美桜の兄妹とつけていたら、またあの男が現れて美桜と接触しだすし。
美桜に触るなって飛び出しそうになったけど、証拠を掴むためにまだ我慢しろって止められた。
そしたら美桜が………美桜が…………」
だんだんと仁くんの声が大きくなる。
「あの男に好きにしていいよって言い出したんだ…………!!
僕は一言一句間違えずに覚えているからね!
気持ちいいことしてほしいなら僕に頼めばいいじゃないか!!」
「ばかっ……!!声が大きい……!!
第一言えるわけないでしょ、私のこと冷たくあしらってたくせに。」
「それじゃあこれからは言ってくれるだね?
いつでも言ってきなよ。
なんなら今からでもいいけど。
たくさん鳴かせてあげるからね。」
「今はそんなのいらない!!
ただこうしてるだけで、十分だから………」
そう、十分。
ただ抱きしめ合ってるだけなのに、それが今どうしようもないくらい幸せなの。



