「幼かった僕は感情に任せて母さんに、何で?好きじゃなかったの?って聞いたんだよね。


そしたらその返事が


『最初は好きだったけど私は1人の人を愛するなんて性に合ってない。色々な男と好きなだけ遊ぶのが一番いいのよ』って。


『バイバイ』って幸せそうな顔で言われ、母さんは男と出て行って。


その日から父さんも変わった。
相当ショックだったと思う。


最愛の人から実は愛されてなくて裏切られたなんて、僕だったら生きていけないけどね。」


最後は少し冗談っぽく聞こえたが、仁くんならやりかねない。


「だから結局父さんは逃げてたんだよ。ずっと。美桜と会うまで。


毎晩帰ってこない日が増えてきて、姉ちゃんと2人で毎日をバタバタと忙しくて過ごしてた。


だけど父さんは父さんなりに悪いと思ってたんだろうね、実は去年僕の誕生日の日に家に帰ってきたんだ。


まあ女1人連れてきてたけど。


その時の僕は美桜のことで頭がいっぱいで、自分の誕生日だってこともすっかり忘れてて。


そしたら父さんが風呂入ってる時に女が俺の部屋に入ってきたかと思えば誘ってきた。


あなたかっこいいわね、これからどう?って言って、僕の容姿しか見てない女に。


もちろん断ったら
じゃああなたが大人になってからやりましょうって。


ますます女が嫌いになる一方。
まあでも美桜のおかげでそれは免れたけど。」


ははっと笑う仁くんだけど、私は笑えない。


笑えるわけないよ。