「今日はありがとう。」


静かな仁くんの声が耳に届いた。


「………喜んでくれた?」


「もちろん。まさか家族揃って食事なんて、もうないと思ってたからね。」


仁くんはそう言って笑う。


だけどその笑顔がさっきと違って私を安心させるかのような笑顔で………


「………そんな不安そうな顔しないでよ。
本当に嬉しかったから。」


「じゃあなんでそんな顔してるの?」


「…………今思えば僕の誕生日はろくなことなかったなって思って。


…………美桜にとったらどうでもいい話だと思うけど、聞く?


あのおんな……じゃないか、母さんのこと。」


そう言われ、黙ってしまう私。


聞きたい。
だけど聞いてもいいのか、と戸惑ってしまう。


でもやっぱり知りたくて……私は小さく頷いた。


「もう一度言うけど、本当に小さいことだからね?」


そして仁くんは話し始めた。