「君は、仁のことどう思ってるんだい?」
予想外の質問に驚いたけど、真剣な顔つきだったから私も真剣に答える。
「……………仁くんは少し変わってるんですけど、いつもストレートで………」
あれ、私ってこんなにも仁くんのことを好きになっていたのだと実感する。
「もう私にとって欠かせない、大切な存在の人です。」
本当はもっと言えることもあるけど、ここで終わっておく。
「…………そうか。」
すると仁くんのお父さんは満足そうに笑った。
「今ので十分伝わったよ。
仁のことそんなに想ってくれてるんだね。」
その後、切なげな表情に変わる。
「せめて私の息子と娘には幸せになってほしいからね…………
って被害者づらしている私も仁をたくさん傷つけてしまったから……親として情けないよ。」
…………そりゃお父さんもたくさん女と遊んでるって聞いたけど………
仁くんはお父さんに対しては特に嫌ってない気がする。
だけどあまり家庭の事情まで踏み込むのは悪いと思い、私はそれ以上何も言わなかった。
その後、私は挨拶をして仁くんの家を後にした。
「…………結局逃げてるのは俺だけか……」
だから仁くんのお父さんがこう言ったことを私は知らない…………。