「ッチ」

舌打ちと共に抱き上げられる。思わず季龍さんの首に手を回したけど、もう、歩けるのに…。

「季龍さん、歩けます」

「黙ってろ。病み上がりだろうが」

その声はイラついたまま。それでも、私を支える手は優しくて、季龍さんを疑った自分を責める気持ちで心は埋め尽くされた。

抱っこされたまま連れてこられたのは、私が使っていた部屋。

季龍さんが触れることなく開いた襖の向こうには、奏多さんと暁くん、信洋さんの3人が待っていた。

「ここちゃん、気分はどう?」

「大丈夫、です」

「…大丈夫なんて顔してないよ」

簡単に覆されてしまう虚勢。信洋さんはしょうがないなって顔をして私の頭を撫でる。

「心配だろうから、先に言うね。内藤成夜くんは家に帰したよ」

「…本当、ですか?」

「証明しろって言われても無理だよ。…でも、俺を信じてくれない?」