声に引き戻される。

季龍さんに抱き締められていた。…手が震えてる。体が、震えていた。

「琴音、大丈夫だ。ここに怖いもんなんかねぇよ」

「…季龍、さん」

「ん?」

「…季龍さん」

バカみたいに、呼ぶことしかできない。

離れないで。傍にいて。ずっと、抱き締めていて…。

伝えたいことはたくさんあるのに声にできなくて、ただ季龍さんの服を握ることしか出来なかった。

急に体が倒れていく。季龍さんの体にしがみつくと、ぬくもりに包まれた。

恐る恐る顔をあげると、すぐ近くに季龍さんがいて、子供をあやすように撫でられる。

「これでも寝れないか?」

「フルフル」

「なら寝ろ。今は休めばいい」

まぶたが落ちていく。心地いい闇が迫ってきて、抗うことなく落ちた。