何かを忘れてる。

…大切なこと。忘れてる。

なんだったっけ?

『火を消せ!!』

『怪我人はこっちに運べ!』

『崩れるぞっ離れろ!!!』

…この、記憶は。

「琴音?」

呼ばれて気がつくと部屋にはもうお医者さんの姿はなかった。

季龍さんに顔を覗き込まれていた。

「…疲れたのか」

「…コク」

「寝てろ。しばらくしたらよくなる」

頭を撫でられて寝かされる。

そうだ、私はすごい疲れてる。…でも、なんで疲れてるのかな?

分からない。分からないけど、考えるのも疲れてしまって、目を閉じる。