「話でもしようか。キミたちもこのまま解放して大人しくしててくれそうにないしね」

「…」

「こんな場所じゃなんだから、場所を変えよう。来てくれるよね」

言葉こそ問いかけているものの、その声に拒否権はなかった。

やって来たワゴン車に押し込めるように、目隠しをした麻夏たちを乗せた奏多と奏太は同乗しようとして信洋に止められる。

「お前たちは屋敷に戻っていいよ。ここちゃん、心配でしょ?」

「しかし…」

「大丈夫。話するだけだし。お前らいると話がややこしくなりそう。…ここちゃん、暴れるかもしれないから落ち着かせてあげて。幼馴染みくんとお友だちは無事に帰したって教えてあげて」

優しく微笑んだ信洋に、奏多の顔に迷いが生まれる。

その一瞬の迷いの間に車のドアは閉められた。

「んじゃ、伝言よろしくねー」

軽快に車に乗り込んだ信洋は奏多たちを残して走り去る。

流石に走って追いかけるわけにもいかず、奏多たちは大人しく屋敷へと急いだ。

客観視end